No.75【富山の半数が該当】
ハザードエリアは避けられない、それでも安心して家を建てる方法とは?
こんにちは。富山市の工務店、HIKAGE代表の日影道也です。
土地探しやハザードマップを見て、「このエリアは避けたほうがいいのだろうか」「そもそも富山で災害の心配がない場所なんてあるのだろうか」と不安になったご夫婦は少なくありません。
とくに富山は河川に囲まれた土地柄もあり、マップを見るたびに気持ちが揺れてしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、公的機関のデータをもとに、日本という国そのものが持つ地形的な特徴と、ハザードエリアとの現実的な向き合い方をお伝えします。読み終える頃には、エリア選びに対する見方が少し変わり、判断材料が一つ増えているはずです。

結論、ハザードエリアは「避ける対象」ではなく「知って備える対象」
まず結論からお伝えすると、ハザードエリアを完全に避けて家を建てるという考え方は、富山に限らず日本全国で見ても現実的ではありません。
国や自治体が示すハザード情報は、住む場所を選別するためというより、リスクを知ったうえで適切な備えをするための資料として作られています。
全国の約7割が何らかの災害リスクエリアに暮らしている
国土交通省国土政策局の分析によると、2015年時点で全国の総人口約1億2,709万人のうち、洪水・土砂災害・地震(震度災害)・津波のいずれかのリスクエリアに含まれる人口は約8,603万人、割合にして約67.7%にのぼるとされています。
洪水リスクエリアだけでも全国で約3,703万人、約29.1%が該当すると分析されており、決して一部の地域だけの話ではないことが分かります。
富山県は洪水リスクエリアの人口割合が全国平均より高い
同じ資料では、富山県の災害リスクエリア内人口は2015年時点で約63万人、県内総人口の約58.7%とされています。
とくに洪水リスクエリアに限ると約58万人、約54.8%と、全国平均の29.1%を大きく上回る水準です。
これは富山県が防災対策で劣っているという意味ではなく、県土の多くが河川によって形成された平野部にあるという、地形的な成り立ちによるものと考えられます。
さらに同資料の将来推計では、2050年時点でも富山県の災害リスクエリア人口の割合は約62.0%になると見込まれており、人口が減少しても、リスクエリアに住む人の「割合」自体は大きくは下がらないと分析されています。

だからこそ「エリアを外す」より「どう備えるか」が判断の軸になる
これだけの割合の人が何らかのリスクエリアに暮らしている以上、「ハザードマップに色がついていない土地だけを探す」という進め方は、選択肢を極端に狭めてしまいます。
背景には、日本で人が暮らせる平地(可住地)が国土のおよそ3割程度しかなく、そのかぎられた平地の多くが河川によって形成されてきたという事情もあります。
大切なのは、ハザード情報を正しく読み、そのうえで建物の構造や保険、避難計画といった備えをどう組み立てるかという視点です。
富山市の地形とハザードマップから分かること
結論として、富山市の多くのエリアが浸水想定区域に含まれているのは、神通川・常願寺川・庄川といった急流河川がつくり出した扇状地の上に市街地が広がっているという、地形そのものの特性によるものです。
富山平野を形づくった急流河川という特性
富山県の河川は、立山連峰など標高の高い山々から短い距離で一気に日本海へ注ぐため、全国的に見ても急流であることが知られています。
県ではこうした河川特性を踏まえ、常願寺川をはじめとする一級河川の治水・砂防工事を長年にわたり進めてきましたが、想定を超える豪雨への備えという観点から、河川ごとの浸水想定区域図の作成・更新が現在も続けられています。
また、河川が運んだ土砂が堆積してできた平野部では、場所によって地盤の性質が異なるため、浸水リスクだけでなく地盤の特性もあわせて確認しておくことが、家づくりの土台となる安心につながります。

富山市洪水ハザードマップの仕組みと確認方法
富山市では、水防法の改正を受けて「想定し得る最大規模の降雨」を対象とした洪水ハザードマップを整備しており、令和2年6月には市内全戸に新しいマップが配布されました。
マップは市内全域を示す全体図と、避難行動の確認用に17地区へ分割・拡大した地区詳細図で構成され、浸水が想定される範囲や深さ、警戒レベルに応じた避難行動が示されています。
ご自身やご家族が検討している土地について確認したい場合は、富山市公式サイトの洪水ハザードマップページや、市が案内する「インフォマップとやま」で調べることができます。

色がついていない場所が「絶対安全」という意味ではない点に注意
ここで一つ注意していただきたいのは、ハザードマップに着色がない場所が、必ずしも浸水の心配がないという意味ではないということです。
富山市自身も、想定を超える規模の降雨によるはん濫や、指定されていない河川のはん濫、内水はん濫(排水施設の能力を超える雨が短時間に集中し、市街地に降った雨が河川へ排水しきれずにあふれる現象)などは考慮されていないため、着色がない場所でも状況によっては浸水することがあると案内しています。
近年は都市部でも短時間豪雨によるこうした内水はん濫が各地で報告されており、洪水ハザードマップの想定区域だけを頼りに判断すると、見落としてしまうリスクもあります。
ハザードマップは「ここなら絶対安心」を示すものではなく、「起こり得ることを知って備える」ための資料として活用することが大切です。

ハザードエリアだからこそ、構造・保険・情報で備える
結論として、仮に検討している土地が浸水想定区域や土砂災害警戒区域に含まれていたとしても、建物の性能や保険の選び方、日頃の情報収集次第で、被害を大きく抑えられる可能性があります。
構造で備える、耐震等級3や地盤調査という選択肢
住まいの安全性を左右する要素の一つが構造です。
耐震等級3は、住宅の耐震性能を示す等級の中で最も高いランクにあたり、消防署や警察署など、災害時の拠点となる建物と同程度の強さを想定した基準とされています。
HIKAGEでは、許容応力度計算による耐震等級3を標準としており、専門機関による地盤調査・解析を行ったうえで、必要に応じて地盤補強工事を実施しています。
あわせて、自社の検査に加えて第三者検査機関による工程ごとの品質検査を導入し、完成後には見えなくなる基礎や構造部分についても、写真付きの記録として残す体制を整えています。
ハザードエリアに該当するかどうかにかかわらず、こうした構造面での備えは、地震や地盤トラブルへの安心材料の一つになります。
ただし、性能の感じ方や効果には個別条件による違いがあるため、詳細は現地調査や専門家との相談のうえで判断することが必要です。

火災保険の水災料率が地域ごとに細分化されている背景
近年、火災保険の分野でも水害リスクへの意識が高まっています。
損害保険料率算出機構は2023年6月、火災保険の参考純率を全国平均で13.0%引き上げるとともに、これまで全国一律だった水災に関する料率を、市区町村ごとのリスクに応じて5段階に細分化することを発表しました。2024年10月以降、多くの保険会社でこの改定が反映されています。
背景には、自然災害による保険金支払いの増加や、資材・人件費の高騰に加え、水害リスクが低いと判断した契約者が水災補償を外す傾向が続くと、必要な人が十分な補償を受けにくくなるという課題があったとされています。
これは、水害リスクの違いを保険料に公平に反映させるための仕組みであり、お住まいの地域の水災リスクを知る一つの手がかりにもなります。
実際の保険料や補償内容は保険会社や契約条件によって異なるため、契約時に個別の確認が必要です。

不動産取引で水害リスクの説明が義務化されている理由
2020年8月、宅地建物取引業法の施行規則が改正され、不動産取引の重要事項説明において、水防法に基づく水害ハザードマップ上の対象物件の所在地を説明することが義務化されました。
これは、水害リスクに関する情報が、契約するかどうかを判断するうえで重要な要素であるという国の考え方を示したものです。
裏を返せば、ハザードエリアに該当すること自体が取引を妨げる要素ではなく、正しく情報を伝え、理解したうえで判断してもらうための制度だといえます。

土地選び・プラン相談で実際に押さえておきたいポイント
結論として、ハザードマップは土地を除外するための道具ではなく、その土地でどう暮らし、どう備えるかを考えるための材料として使うことをおすすめします。
HIKAGEが土地探しの際に一緒に確認していること
HIKAGEでは、土地のご提案の際に、想定される浸水深や避難場所の位置、地盤の特性などをできる範囲で一緒に確認しながら、その土地に合った建て方をご提案しています。
基礎の高さや盛り土の要否、駐車スペースの配置など、間取り以前の段階で検討しておくべき項目も少なくありません。土地代だけでなく、地盤補強や外構、申請費用まで含めた総額で無理のない計画になっているかを確認する視点も大切にしています。

よくある迷い、見て不安になる方と、見ずに決めてしまう方
現場でよくご相談いただくのは、ハザードマップを見て急に不安になり検討を止めてしまうケースと、逆にマップを確認しないまま契約を進めてしまうケースの両方です。
どちらも、リスクの内容を正しく知らないまま判断している点は共通しています。
浸水想定区域に該当していても、想定される水深や継続時間、避難場所までの距離を具体的に把握することで、住まいづくりの計画に落とし込むことができます。
気になる土地があれば、まずは情報として相談してみる
「この土地は大丈夫だろうか」と感じたときは、一人で判断せず、まずは情報収集の一つとしてご相談いただくことをおすすめします。
ハザードマップの読み方や、想定される浸水深に応じた基礎の高さ、地盤対策の考え方など、具体的な条件を踏まえてお話しすることができます。

この記事のまとめ
日本全国で見ても、そして富山県内で見ても、洪水などの災害リスクエリアに暮らす人の割合は決して低くありません。
ハザードマップに色がついているかどうかだけでエリアを判断するのではなく、想定されている浸水の深さや継続時間、避難場所までの距離といった具体的な情報を確認し、そのうえで建物の構造や保険、資金計画にどう反映させるかを考えることが、後悔の少ない家づくりにつながります。
土地探しの初期段階から専門家と情報を共有しておくことで、判断に迷ったときの拠り所も持ちやすくなります。
気になる土地がある場合は、早い段階で専門家と一緒に情報を整理することをおすすめします。
引用元・参照元
・国土交通省 国土政策局「都道府県別の災害リスクエリアに居住する人口について」(https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001373119.pdf)
・総務省統計局「社会生活統計指標-都道府県の指標」(可住地面積率、全国平均約32.9%)(https://www.stat.go.jp/library/faq/faq01/faq01a03.html)
・富山市公式ウェブサイト「洪水ハザードマップ(地図)」(https://www.city.toyama.lg.jp/bosai/bosai/1011986/1010657/1006974.html)
・富山市公式ウェブサイト「洪水ハザードマップ」(https://www.city.toyama.lg.jp/bosai/bosai/1011986/1010657/index.html)
・富山県「とやまの水を治め、使う(治水対策・洪水ハザードマップ)」(https://www.pref.toyama.jp/1711/kurashi/kankyoushizen/kankyou/mizu/hazard/index.html)
・損害保険料率算出機構「火災保険参考純率 改定のご案内」等の各種報道をもとにした解説記事(日本経済新聞、ソニー損保「新ネット火災保険」ほか)
・国土交通省「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化」(https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000205.html)
※本記事は執筆時点(2026年7月)の情報です。制度や金利、保険料率、ハザードマップの指定内容などは今後変更される場合があります。最新の情報は各公的機関の公式サイトでご確認ください。
よくある質問<FAQ>
Q1. ハザードマップで色がついている土地は、家を建てないほうがいいのでしょうか。
A. 色がついていること自体が「建築不可」を意味するわけではありません。想定される浸水の深さや頻度、避難のしやすさなどを具体的に確認したうえで、構造や基礎の高さといった対策と合わせて検討することが大切です。判断に迷う場合は、土地の条件を踏まえて専門家に相談することをおすすめします。
Q2. 富山市が浸水想定区域を多く抱えているのは、防災対策が遅れているからですか。
A. そうとは限りません。富山県内の河川は急流であることが知られており、平野の多くが河川によって形成された地形であるため、想定最大規模の降雨を前提とすると広い範囲が対象になりやすいという地形的な事情があります。県や市では治水・砂防工事やハザードマップの更新を継続的に進めています。
Q3. ハザードマップに書かれていない浸水は起こらないと考えてよいですか。
A. いいえ。富山市も、想定を超える降雨や、指定されていない河川のはん濫、内水はん濫などは考慮されていないため、着色のない場所でも状況によっては浸水することがあると案内しています。マップは目安として活用し、過信しすぎないことが大切です。
Q4. 浸水想定区域内でも火災保険の水災補償はつけられますか。
A. つけることは可能です。ただし2024年10月以降、水災に関する料率は地域ごとに5段階に細分化されており、地域によって保険料が異なります。具体的な料率や補償内容は保険会社によって異なるため、契約前に個別に確認することをおすすめします。
Q5. 土地を決める前に、ハザードマップ以外に何を確認すればよいですか。
A. 浸水深や避難場所に加えて、地盤の特性、過去の水害履歴、周辺のインフラ状況なども判断材料になります。HIKAGEでは、土地探しの段階からこうした情報を一緒に確認しながらご提案しています。
HIKAGEの施工エリアについて
弊社では、富山市を中心に、射水市・高岡市・滑川市・上市町・立山町・舟橋村にて、家づくりのご相談を承っています。
事務所から車で40分圏内を主な商圏としており、対応可能エリアの詳細はお気軽にお問い合わせください。
ご相談・お問い合わせについて
「自分たちが検討している土地のハザード情報を知りたい」「性能面でどんな備えができるのか聞いてみたい」という方は、まずは情報収集からでも大丈夫です。
家づくり勉強会や個別相談、オンライン相談もご用意していますので、気になる点があればお気軽にご相談ください。